ヤニカスおじさんの生態

ヤニカスの汚いおじさんが与太話を書きます。

雪道の紳士と害獣

 先日、東京にも雪が振りました。
 んで、おじさんの通勤途中に坂道があるんですけど。

 雪が降った日の翌日は雨と朝日を浴びて溶けかけた雪でテッカテカのツルッツル。
 まるで17時過ぎたくらいの私のオデコみたいになってましてね。
 当然滑るでしょうから、その坂を下っている結構な数の方々はほぼ全員が内股気味でよちよち歩き。
 道行く人々のコートが暗めな色合いなのも相まって、まるでペンギンさんの群みたい。
 よちよち、よちよちと内股気味の集団が一生懸命に駅へと向かって歩いている光景は大自然ドキュメンタリーぽくて。
 皆、コンクリートジャングルと言う大自然の中で強く生きているんだなぁ、と独り感動していました。
 
 そんな思いを胸に、私も群れに混じって階段を下りましょう。
 まあ、おじさんはスタッドならぬふとっちょですから?
 音の響きが似ている、という事は性能とかも多分似ているはず。
 という事は雪道の走破性も高いような気がしますので安心ですね。
 皆様と同じく内股のよちよち歩きで一生懸命に坂道を下って参りましょう。

 今日もこの一歩から、おじさんのドキュメンタリーが始まるのです。

 

 危ない場面もありましたが、無事に坂道を下りきりました。

 この先は駅まで平地が続きます。

 雪かきは済んでいませんが坂道ほどの危うさはありません。

 なので今まで内股よちよちだった皆様が急にスタスタ歩き出すんですね。
 ペンギンだった方々が、坂を下りきると一斉にサラリーマンへと進化を遂げる訳です。
 今まで弱々しかったものが大自然の中で揉まれ、強くたくましく生きていく。

 なんと感動的な光景ですなのでしょうか。

そのうちNHKドキュメントで番組になったりするんじゃないですかね。 

 さて私も皆様に続いてサラリーマンへ進化する時が訪れました。
 今日も社会の歯車として頑張っていきましょう。

 

 ……転びました。

「お゛ぉ゛ぅっ!」みたいな汚い鳴き声をあげて派手にすっ転びました。

 漫画みたいなコケ方をして地べたに這いずるおじさん。

 サラリーマンへ進化した方々が汚物を見るような視線を向けながら迷惑そうに避けて歩いて行きます。
 どうしましょう。

 他の方がまともな進化を遂げる中、私だけが陸に打ち上げられたトドみたいになっているではありませんか。
 皆様の歩行を邪魔しているという点で、むしろ環境汚染生物じゃないですか。

 

「大丈夫ですか?」

 ズブ濡れの危険外来種と化した私へ、そんな声が掛けられました。
 視線を上げると、細身のナイスミドルが心配そうな顔をして私を見ています。
 そのまま彼はそっと右手を差し出し、私を助け起こしてくれたのです。 

「身体で痛い所はないですか? 今日は道が滑りやすいですからね。お互い気を付けましょう」 

 微笑みながらそう言い残し、ナイスミドルは去って行きました。

 

 ちょっと、イケオジ過ぎませんか。
 何を食べたらそんなイケオジになれるんですか?
 生物学的にヒト科のオスって事以外、おじさんと何もかも違うじゃないですか。

 その時のおじさんはズブ濡れだったので、ある意味「水も滴るいい男」でしたが、大体一緒とか言えないくらいの隔たりがあるじゃないですか。
 2兆回くらい生まれ変わっても、あんな風になれない自信があります。

 生物として格の違いを思い知らされた、そんな雪の日の出来事でした。 

 

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 次のヤニカス喫茶紹介で冒頭に使おうと思って書いたのですが、長い上に時期が外れてしまいそうなので別枠にしました。

 山手線各駅のヤニカスok喫茶店とか書きたいなと思っていたのですけど、チェーン店以外の喫茶店て本当に少ないのです。

 チェーン店は喫煙ブースで吸える所も結構ありますが、あんまり面白みがないのですよね。