ヤニカスおじさんの生態

ヤニカスの汚いおじさんが与太話を書きます。

ヤニカスが石を投げられない喫茶店④

 駅にある喫煙所の扉を開いて外に出たら、通り掛かった外国人の方が眉をしかめ「oh,bad smell」と呟かれました。
 どうやら私は国際的にくさい存在だったようです。
 少し傷付きましたが「グローバルバッドスメラー」って横文字にすると何かのインフルエンサーぽい気がしますし何だかカッコいい気がするからセーフ、という事にしておきましょう。
 さて、そんな感じで今日もヤニカスokな喫茶店を紹介して行きますね。
(*店内撮影不可らしいのですが、食べログとかだと料理の写真は載っているので私もその基準で写真を使わせて頂いています。問題あるようなら後で消えます) 


[秋葉原 カフェモコ]
 お店の場所はJR秋葉原駅電気街口を出て3分掛からないくらい。

 昭和通りに面したビルの一角にひっそりとある喫茶店です。
 店のシンボルはタバコ吹かすおじさんのシルエット。

 ヤニカス的にはとても魅力的で勇気付けられるマークですよね。
 店内入ってすぐのカウンターで商品のオーダーと会計を済ませるスタイルで、頭上は色とりどりの輝く電飾で彩られていて縁日ぽい雰囲気。
 そして商品一覧のボードと共に、様々な国の紙幣がクリップで大量に留めてあります。
 ドルとか人民元はもちろん、全然知らない国の紙通貨が一面に飾られていて、見ているだけでワクワクしてきますね。
 紙幣の隅に「thank you〜」とか書かれていたので、おそらく外国人観光客の方が残していったものでしょうか?
 ジンバブエドルとかあったら面白いなと思って注文待ちの間に探しましたが、最近老眼が気になり始めているおじさんアイでは発見出来ませんでした。残念。
 
 B1F、1F、2Fとフロアがあって2Fのみ喫煙可。
 オーダー完了してお会計を済ませると、食事は後で届けて下さるとの事なので飲み物だけ貰って喫煙可能な2Fまで上がります。
 ここで注意点がひとつ。
 お店の心遣いにより、飲み物は全てカップのフチ辺りまでたっぷり並々と注がれているんですね。
 つまりコーヒーをこぼさないように階段を上がるのに、かなりの技術が必要でして非常に難易度が高いんですよ。
 タイミング悪く、階段の途中で他の方とすれ違いなどが発生するとコース取りの難しさは天井知らず。
 気分はまるで繊細なドラテクで峠を攻めるイニシャルDの拓海さん。

 訪れた人のバランス感と巧みなコーナーワークの見せ所なんですよ。
 ええ、もちろん私は毎回こぼしてますよ?
 カフェモコ峠は初心者にとって難しいコースですからね。仕方がないのです。
 
 さて慎重な足捌きで階段を踏破すると、そこは喫煙可能席というエルドラド。
 店内壁紙や照明もお洒落レトロな素敵空間で、店内BGMはジャズやボサノバが流れています。
 後はヒョウとか虎とかネコ科の猛獣の置物が、店内のあっちゃこっちゃに設置されています。
 多分、秋葉原という土地柄とお洒落が絶妙なバランスで交わり合った結果として、このような面白不思議お洒落な空間が形成されたのでしょう。
 地政学的見地からしても大きく間違ってはいないんじゃないでしょうか。
 よく知らないですけど。
 
 店内は秋葉原の喫煙者が集まって居るようで大体混んでます。
 空いてた窓際のカウンター席に腰を下ろすと、テーブル上には先客であるカエルの置物。

カエルとコーヒー

 このカエルさん、王冠を被っているのに物憂げな表情で頬杖をついたまま体育座りをしておられまして。
 よく見ると首元に六文銭みたいなネックレスが掛かっており、そこに付いている缶バッジに何か文章が書かれています。
 『私は暴力が嫌いだ』
 ……詳細は不明ですが、とても苦労をされているようですね。

 店内に居るネコ科の猛獣達に甘咬みされたのかも知れません。
 どんな目にあったか彼は語ってくれませんでしたが、お互い強く生きて行きましょうね。
 カエルさんが受けたであろう仕打ちを想像し、ちょっぴり切ない気持ちで飲んだコーヒーは苦みと酸味が薄いタイプ。
 飲みかけで放置してしまっても、あまり酸っぱくならないコーヒーでした。
 大井町のポットリーに続き、イケオジなマスターさんは私の中で勝手に「コーヒーを美味しく淹れてくれる妖精さん」に認定します。
 
 そんな感じでコーヒーを飲みながら料理が提供されるまで、店内を見渡してたのですが……
 後ろの席にはイチャつくカップル。
 私と同じ窓際のカウンター席では、オーダーした商品と一緒に持参した人形と撮影を楽しんでいる方。
 両者が混在する喫茶店など秋葉原くらいでしかお目に掛かれないんだろうな、などと考えながらコーヒーを啜る汚いおじさんである私。
 バラエティ豊かな人々を包み込み、ボサノバをBGMにして実に緩やかな時間が流れます。
 
 料理の紹介。

チーズホットドッグ

 パンからはみ出るソーセージにチーズをたっぷりかけて焼かれた逸品。
 パンとお皿の間に薄黄色のプレートみたいなのがあって、何だろうと思ったらチーズが羽根みたいになってました。
 羽根付餃子なら知ってますが、羽根付ホットドッグは初めてです。
 更にプレートの空きスペースは許せないと言わんばかりに、ポテトチップスが山盛りで付け合せられていまして。
 何だかアメリカの風を感じるディスプレイですね。アメリカのホットドッグとか食べた事ないですが多分そう、部分的にそう。
 見た目に圧倒されつつ、付属したケチャップとマスタードをビッチビチに振りかけて頂きましょう。
 齧り付くと、温かで焼きたてっぽいふっくらしたパン、ソーセージ、チーズ、ケチャップ、マスタードの夢コラボが口の中で弾けます。
 こんなの美味いに決まってるじゃないですか。
 口の中が油っぽくなったらコーヒーで口を洗い、思い出したようにポテチを齧り、カリカリになった羽根チーズを摘む。気分はまさにアメリカンキッズです。
 コーラの方がよりキッズぽい感じになったかなと思いながら食していたのですが、気付けば口の周りと手がベトベトに。
 あらやだ。今のおじさんの食事風景ったら、まんまアメリカンなキッズじゃないですか。
 提供されたホットドッグをキッズみたいに手掴みで思うがまま食し、無事完食。ベタついた口と手を紙おしぼりとナプキンで拭ってから〆にクッキーを頂きます。
 童心を思い出させてくれる、とても素敵なメニューですね。

焼肉ドッグ

 ホットドッグのバンズにレタスを敷き、焼肉を挟んだ逸品。……正確にはパンの隙間に肉を詰められるだけネジ込んだ逸品です。
 もちろんプレートの空きスペースは美しくないですから、ポテトチップスもどっさり付いてきますよ。
 囓ると甘辛いお肉の味が口いっぱいに拡がります。散らされた白ゴマも良いアクセントで美味。ご飯が欲しくなってしまいますね。
 これはフォークが一緒に提供されたのですが、お肉だけだとちょっとしょっぱいですし、パンを齧ろうとすると使うタイミングなさそうなので、結局使用できませんでした。
 カフェモコ上級者の方はどう使うのか、が少し気になります。
 

焼きそば

 極細麺をたっぷりのキャベツとソーセージに絡めて焼き上げた逸品。
 皿にどっかりと盛られた焼きそばの上には刻み海苔。紅ショウガも横に控えています。
 そして何故かパンも一緒に提供されます。
 ……パン??
 頭に疑問符を浮かべながらよく見ると、中央に切れ込みが入っていました。
 なるほど! これ使って自分で焼きそばパンを作れ、という事ですね。
 カフェモコスタイルでパンの隙間に限界まで焼きそばをネジ込んで、紅ショウガを散らせば、おじさん謹製の焼きそばパンが完成。
 焼きそばパン作れるとか、遊び心があって素敵過ぎませんか。
 ちなみにパンに挟んでも普通の焼きそばくらいの量は余ります。
 味としては縁日で食べる焼きそばをオシャレにした、すごくいい感じのソース味でした。
 

カルボナーラ

 とろっとろなカルボナーラパスタの中心に卵黄が鎮座し、ピリりと胡椒の効いた逸品。
 残ったパスタソースに着けて食べる用なのか、こちらもパスタ本体とは別にパンが一緒に提供されます。
 パスタとソースの絡み具合、卵黄のまろやかさ、胡椒の刺激がとてもいい感じで美味しかったです。
 パンはバターの効いた少し甘めなクロワッサンで美味でした。
 
 カフェモコの料理は何を頼んでも「物足りない」と感じる事がないです。
『食べ物を頼むって事はお腹が空いてるって事だよね? よし任せとけ! 必ず君のお腹を幸せで満たしてあげるよ!』みたいな感じでしょうか。
 とにかく食事を頼んだ客をお腹いっぱいにしてあげたい、という店側の思い遣りがビンビン伝わって来ますね。
 頼んだ食事メニュー全てにクッキーついてきてますから食後の口直しもバッチリです。
 喫煙される方には大きく頷いて頂けると思うのですが、満腹になった直後に吸うタバコのまぁ美味しいこと。
 食後はタバコとコーヒーを楽しみつつ、昭和通りを行き交う人々を眺めながら優雅な時間を過ごしました。

昭和通りを眺める虎とアイスコーヒー

 店の奥には昭和通りを見つめる虎の置物も居ますし、多分これがカフェモコのカウンターで食事した際の正しいマナーでしょう。

 

 

 しかし秋葉原も変わりましたね。
 私が初めて訪れた時は駅前にジャンクパーツ横丁みたいのがあって謎の部品がいっぱい置いてある、みたいな場所だったのに。
 当時の人に「秋葉原はお洒落になって、道端にメイドさんがいっぱい生えてる」って言っても誰も信じないでしょう。
 そんな時代の流れを懐かしみつつ、おじさんは秋葉原を後にしたのでした。


 
 以上、ここまで読んで頂いてありがとうございました。
 また都内の喫煙可能な喫茶店を紹介しようと思いますので、読んで頂ければと思います。